車検切れの車で事故を起こしたときの罰則と対処法。被害者になった際の救済措置など

「気づいたら車検が切れていた」
そんなときに限って事故が起こることもあります。
車検の有効期限が切れた状態での事故は、通常の交通事故よりも重い処分が科されます。
今回は、車検切れの状態で事故を起こしてしまった場合の罰則やもしもの時の備え、取るべき対応について詳しく見ていきましょう。

目次
車検切れの車で事故を起こした場合の罰則について

車検切れの車で事故を起こすと、車検切れに対する罰則+事故に対する罰則が科せられます。
そもそも、車検が切れた状態で公道を走ることは、道路運送車両法に違反する行為です。
車検切れで走行しているだけでも刑事処分や行政処分の対象となり、違反点数が加算されます。
この状態で事故を起こした場合は、その事故に対する罰則も追加されることになります。
つまり「車検切れ」+「事故」という二重の違反状態となるのです。
仮に体調不良や不可抗力が事故原因だったとしても、車検が切れていれば一切の免責は認められません。
ちなみに、罰則の内容は「物損事故」か「人身事故」かによって大きく異なります。
それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
物損事故の場合
違反点数 | 刑事処分 | 行政処分 |
6点 | 免許停止 | 6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金 |
物損事故では、たとえ相手に怪我がなくても、車検切れの状態で走行した事実自体が処分の対象になります。
まず、違反点数は6点が加算され、行政処分としては免許停止が科される可能性があります。
さらに、刑事処分として6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課されることになります。
飲酒運転やスマートフォンの操作といった別の違反を伴っていた場合は、処分が重くなる可能性もあるため注意が必要です。
「事故は小さかったから」と安心してはいけません。
人身事故の場合
違反点数 | 刑事処分 | 行政処分 |
6〜20点 | 免許停止 | 6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金7年以下の懲役または禁錮刑の場合も |
人身事故では、相手に怪我をさせてしまった場合の責任が重く問われます。
最低でも違反点数が6点加算されるほか、刑事処分として6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられることになります。
さらに、過失の度合いや相手の怪我の状態によって処分内容が変化します。
例えば、相手の治癒期間が15日以上30日未満の場合、自身の過失が大きければ20点、相手の過失が大きければ13点が加算されるケースもあります。
被害者が亡くなった場合には、7年以下の懲役または禁錮刑が科されることも。
事故の状況により処分の重さは大きく異なりますが、どんな場合でも「車検切れ」がある限り、情状酌量は望めません。
保険も切れていた場合はどうなる?

車検と同様に、自賠責保険の有効期限が切れている場合も大きな問題となります。
そもそも、自賠責保険が切れた状態での走行は6点加算と、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象。
これは、車検切れの罰則よりも重いものです。
それに合わせて事故を起こした場合には、刑事・行政処分に加えて、損害費用をすべて自己負担しなければならなくなります。
自賠責保険は車検と同時期に更新されるため、車検が切れていれば保険も切れている可能性が高いといえます。
ダブルで失効していると、その分リスクも跳ね上がるのです。
関連記事:車検が切れたときの罰則や気づいてからすべき対応、注意点を解説
任意保険だけ有効期限が切れていなかった場合
任意保険の契約期間は車検や自賠責保険とは異なるため、稀に任意保険だけが有効な状態になっていることもあります。
この場合、任意保険による補償が適用される可能性はありますが、かならずしも全額が補償されるとは限りません。
保険会社の契約内容によっては「車検切れの状態では補償対象外」と明記されているケースもあります。
そのため、たとえ任意保険が有効でも全額補償が受けられなかったり、減額されたりするリスクがあります。
日頃から任意保険の契約内容を見直し、補償の範囲を確認しておくと、いざというときにも安心です。
車検切れの車で事故を起こしたあとの対応

事故を起こしたあとでも、車検切れの車に対して特別な処分や扱いがあるわけではありません。
通常の車と同じように、修理して再び使用することもできれば、状態によっては売却や廃車の判断を下すこともあるでしょう。
もしそのまま乗り続けたい場合には、当然ながら車検を受け、合格することが条件となります。
そして、車検が切れていても、正しい手順を踏めば車検を受けることは可能です。
車検切れ車両をどう扱うかは状況次第ですが、検討材料として下記の関連記事も参考にしてみてください。
関連記事:車検切れとは?どうなる?有効期限切れのリスクと対処法を徹底解説
車検切れの車による事故に巻き込まれた場合の心構え

事故の被害者となった場合、治療費や修理代、さらにはレッカー費用などは原則として加害者が負担することになります。
しかし、加害者が車検も保険も切らしていた場合、その支払い能力に大きな不安が残ります。
加害者に財産があったとしても、それを差し押さえたうえで支払いに届かないケースもあるでしょう。
加害者が自己破産を選択した場合、損害賠償を受け取れなくなる可能性もあるのです。
このような場合、被害者自身が支払いをしなければなりません。
当然、被害者側としては「事故に巻き込まれたうえに、支払いも自分でしないといけないなんて!」と憤りの気持ちでいっぱいでしょう。
こうした事態に備え、政府では「政府保証事業」という救済措置を設けています。
救済措置「政府保証事業」について

無保険車との事故に巻き込まれた場合、頼りになる制度が「政府保証事業」です。
これは、損害保険会社を通じて国が被害者に対し法定限度額まで補償を行うという救済制度。
請求は事故発生日からの時効内であれば可能で、損害保険会社の窓口で手続きが行えます。
無保険事故の被害者となってしまった場合は、この制度の利用を検討してみましょう。
車検切れは重大なリスクを伴う!忘れないことが最重要

車検切れの状態で走行することは、重大な法律違反であり、大きなリスクを伴います。
たった一度の確認漏れが、事故や法的処分といった深刻な結果につながることも。
車検や保険の有効期限は、つい後回しにされがちですが、安心・安全なカーライフのためにも定期的な確認を忘れずに。
「うっかり」が、自分や誰かの人生を大きく変えてしまう前に、今一度車検の有効期限を確認してみてはいかがでしょうか。
